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「なぜ、組織の対話が機能しないのか?」U理論の観点から組織開発について考える

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組織・人材開発領域に携わる方なら「U理論」という言葉を一度は耳にしたことはあるのではないでしょうか?

U理論は組織のイノベーションや個人の自己変容にも応用されている理論ですが、私のように再現性が難しい理論だと感じている方も多いのではないかと思います。

本日は、U理論をベースにした「組織・人材開発」「マーケティング」の支援をされている古江さんと「U理論」について対話を深めていければと思います。

古江 強プロフィール
WEBマーケティング会社、自律をテーマにした人材育成会社を経て「U理論」を活用した組織・人材開発事業を行なうオーセンティックワークス株式会社にマーケティング担当として参画。現在は、「U理論」を活用した組織・人材開発/マーケティングの支援を行っている。

ーU理論って古江さんの言葉で言うとどういうことでしょうか?

U理論は、MITのオットー・シャーマー氏が提唱している、イノベーションに関する理論といわれています。「過去の延長戦上にないものはどう生まれるのか?」というプロセスが、明確に提示されています。

だからこそ、「商品開発」「技術革新」「組織や個人の変革」「社会変革」様々な分野に活かせることができます。

有名な話ではありますが、南アフリカでのアパルトヘイト(人種隔離政策)の解決や子供の貧困等、因果関係が複雑な社会問題の解決でも活かされているようです。

ーなるほど…古江さんはどのような機会でU理論との出会ったのですか?

2009年頃ですかね…当時、うつ病になってしまった時に、知人からこのU理論をベースとした自己変容を促すワークショップを紹介してもらったのがきっかけでした。

U理論を体験することで、仕事や日常生活がうまくいかない要因に「自分は特別な人間だと証明しなければ」という思い込みがあったことに気づくことができました。

その後は、肩の荷がおりてメンタルの状態が良くなっていきましたね。

U理論の中で、人には生まれたことに何らかの意味があるという背景から「あなたは何者で、何を成すのか?」という問いがあります。

私自身は、その問いに可能性を感じ、意義あることをやりたいと考えるように変化していきました。

ーおそらく「Uの谷をくぐる」ということが難しいと思うのですが、何かコツはあるのでしょうか?

肝は、執着を手放すということですね。手放すことで何かが湧き上がってくる感覚を掴むことが重要ですね。

執着を手放すことが難しい人の特徴としては、「今の人生や自分について困っていない」「恐れや諦めが深い」「人や自分を信じることができない」等があげられますね。

おそらく「自分の進路を2つの選択肢から深く考え決断する瞬間」「長く連れ添った恋人との別れを決断する瞬間」等、U理論のプロセス自体は、人生のシーンの中で多かれ少なかれ経験していると思います。

ーU理論を人材開発に活かしていく際にはどんなことを意識すると良いでしょうか?

リーダーシップ開発との相性がいいと考えています。

「心の中に願っている内発的な意志の解放」「その人らしい強みの解放」という2つを実現できると効果的ですね。

対象については、大手企業の社長にも提供しているものなので、管理職層であっても若手層であっても効果はあると思います。

ただ、過去の成功体験に固執してしまっていると、成果につながりにくい側面もありますが…

ーチームや組織を対象とする組織開発との相性はどうでしょうか?

組織開発においては、対話からU理論のプロセスを体感いただき「Visionへの認識を深めたること」「チームのパフォーマンスを最大化するための関係性構築」等に応用できます。

組織で「U理論」通じたワークショップを行う際は、「腹をくくった人」「自分をさらけ出せる人」がその場にいるかということが肝になります。

想いを持った人がいないと、参加者がその場から離脱していくこととなってしまいます。

なので、当日の対話の機会も重要ですが、それまでにファシリテーターと顧客(企画者)が腹をくくり合うというプロセスを意識して臨んでいます。

ーなるほど…前職時代にマネジャーと経営者で新たなビジョンのすり合わせをテーマに対話する機会があったのですが。個々の想いがすり合わなかったことを思い出しました…

U理論の観点の中で「小さな自己」と「大きな自己」という言葉があります。

「小さな自己」というのは、損得感情などのエゴイスティックな自己のようなものです。

「大きな自己」というのは、心の内から湧き上がる本当の願いを持った自己のようなものです。

U理論の前提は、世の中に何かを生み出そうと信じているか否か、つまり「大きな自己」があるかが鍵となっています。

ー数名の「大きな自己」がないと、結局「小さな自己」のぶつかり合いで対話が機能しない実感は非常にありますね

先程の新たなビジョンをすり合わせる対話の例でいくと、「小さな自己の集団になっていた」「関係性の問題から、小さな自己が発生しやすい場になっていた」ということが考えられるかもしれませんね。

あとは、「腹をくくった人の不在」かもしれません…

ー経営者や管理職層が「大きな自己」からビジョンを掲げられると、社員の対話や現場の仕事においても生産性が高まる気がしますね…

そうですね。ビジョンはどういったエネルギーが結晶化されて作られた言葉なのかが重要です。

個人的にはパタゴニアが掲げる言葉には心が震えるなと感じています。

「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として、環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」

ただ、大手企業においては社員数が多いだけに、なかなか社員同士がつながる方針を掲げることにハードルの高さは感じますね…

ーちなみに、大手企業に限らず幹部層が「大きな自己」からビジョンを描くにはどのようなプロセスを辿ることが肝になりますか?

U理論において、開かれたい意志に辿り着くにあたって、開かれた心というフェーズがあります。

開かれた心は、その人の本来の優しが芽生えるという感覚なのですが、そこでは組織メンバーの靴を履く、顧客の靴を履くという形で、他者の感情を深く理解する体験をします。

実際には、その場に当事者に来てもらって当事者の声をリアルに聞くということを実行したりします。

ーその場が深まるイメージが湧きますね。幹部層が組織の方針を描くにあたっては、まず幹部層の相互理解を深める「関係の質」を築くというフェーズもあると思います。その際に肝になることはどのように考えられていますか?

いきなり関係の質は深まらないので、グループ単位ではなくペアの単位でステップを踏んでいきます。

1段階目は、安心・安全な場をつくることを目的に、互いを知るということを実践していきます。他にはグランドルールを作ることも一つですね。

2段階目は、弱さをさらけ出すということを目的に、内省を深め自己開示をするということを実践していきます。個々が抱える弱さや痛みを共有できると距離感が近づきます。

3段階目は、想いが語られる場をつくるということを目的に、想いを語り合うということを実践していきます。

こういったプロセスを辿ることで関係の質を深めていきますね。

最後に人事部の方々へメッセージをお願い致します

私は、人事部の方には、何らかの人への想いがあると考えています。

U理論には、「自分は何者で、何を成すのか?」という問いがありますが、人の可能性を信じる人事という部門において、自分は何者として、何を成すのか(=何を創るのか)をご自身に問いかけ続けていただけると嬉しいです。

その問いの中にい続けること自体が、Uプロセスを辿るきっかけになっていきます。

高橋政成
大学を卒業後、人事コンサルティング会社(株)シェイクへ入社。研修プログラム開発、コンサルティング営業として、100社以上の人材育成に携わる。トップセールスを達成した後、最年少マネジャーへ昇格。その後、既存事業と兼務で、大学向け教育の新規事業を立ち上げ。2016年、大学・採用・組織開発の領域から、新たな価値を創るためにOriginal Point株式会社を設立。
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