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探究レポート

20代のキャリア開発 事例

「会社を辞めさせない“若手キャリア研修”という矛盾」新人からはじめるキャリア開発のこれから

「キャリアについて考えてもらいたいけど、会社を辞められては困る」この言葉だけを切り取ると違和感はありますが、「お金」と「時間」を投資してきた人事担当者の立場に立つと共感できる部分もあるかと思います…

昨今は、社会や働き方の変化、イマドキ若手社員のキャリア観の変化によって “突然の内定辞退” や“エース社員の転職” “キャリア観の違いによる上司・部下の関係不和” といった課題に頭を悩ます人事担当者の方も少なくありません。

本日は、弊社で取り組んだ、新入社員研修期間から始めるキャリア開発の事例から、これからのキャリア研修・支援について考えていきたいと思います。

節目のキャリアデザインは機能するのか?

「転職」へのハードルも下がる昨今、入社後3〜5年といった節目における「転職」は、往々にして少なくはありません。

また、このタイミングでのキャリア研修を企画するにあたっては、組織の期待としては「中長期のキャリアデザイン」を通じて、「現状の業務に、より主体的に働いてもらいたい」「組織の中核を担う意識を持ってもらいたい」といった期待も一定数あるかと思います。

一方で当事者であるイマドキ若手社員は、どのように考えているのでしょうか?

昨年弊社が実施したグループインタビューにおいては、自組織で働き続けることには拘っておらず“個人としての成長”や“働きやすさor働きがいがある環境”といったことを求めているのがわかります。

あくまで一部の声でしかありませんが、「転職」「複業」「大学院での学び直し」といった多様な選択肢を持つイマドキの若手世代に、「自社で働き続けることに加えて、主体的に働いてもらいたい」という期待を節目のキャリア研修で叶えようとするには無理があるように感じます。

5カ年計画のような立派に清書されたアクションプランはできても、数日経ったら「忘れさられる紙」と化しているでしょう…

大切なのは、新卒からのキャリアデザインではなく、キャリア開発へのオーナーシップをもつこと

イマドキの若手世代のキャリア観の変化とともに、“組織と個人の関係性”にも変化が生まれています。

人生100年時代とよばれ「いい大学に入って、大手企業とよばれる安定した会社で勤め上げ、老後を暮らす」といったシンプルなキャリアデザインが難しい時代において、個人が組織に「依存」し、組織が個人を「拘束」するといった関係性は成り立ちにくいのが現状です。

2016年には「職業能力開発促進法」において、労働者個人にキャリア開発における責任が課されられると改正されています。

これからの「個人」と「組織」の関係性においては、個人が組織を「活用」し、組織が個人の自律を「支援」するといった、相互活用型の関係性が主流になってきます。

個人の立場としては、「組織に所属するから対価がもらえる」から「組織を活用して価値を発揮するから対価がもらえる」、「組織・上司に育ててもらう」から「組織・上司から学び成長を掴む」といった意識転換が求められます。

先日、その取り組みの一つとして、某大手の新入社員研修において「ビジネスマインド・スキル」ではなく「キャリア」をテーマに研修を実施させていただきました。

背景としては「組織として成長機会は用意するけど、成長機会を掴み活用するのは個人の責任」ということを、早期に認識してもらうということが一番の理由です。成長機会は「準備された研修」ではなく「現場」に転がっているからこそ、早々に研修を切り上げ4月の1週目から現場に配属するというスピード感は新鮮なものがありました。

「マイテーマ」を軸にしたキャリア開発の仕組み

役員から「“組織として目指す方針”と“キャリア開発へのオーナーシップの重要性”を語り」現場から「キャリアの変遷とリアルを語り」それらをまとめとしてキャリア研修の中で考えるのが「マイテーマ」という概念です。

マイテーマとは「興味からつくられる探求したい問い」のことで、与えられた環境や仕事の中から、数ヶ月単位で深めていくものです。

入社時点は「●●業務で求められる役割は?」といったテーマからはじまり、「顧客満足度を高めるには?」「リーダーとして、メンバーを活かすには?」といったように、環境や仕事によって変化していくものになります。

漠然としたな年単位のアクションプランも時には大切ですが、リアルな社員の声から新たな一歩を踏み出すためのマイテーマを定めること。与えられた目の前の環境や仕事に対して、常に自ら「テーマ」をもって考えや行動を起こし、数ヶ月単位で振り返りをしていくことの素地を育くむことが、納得感の高いキャリア開発につながるのです。

入社時からキャリア開発をすることの意義

今回の取り組みの結果として「自分が将来どのような目標を持つべきなのか、その目標を達成する上で自分に何ができてなにかできないのか考えるよいきっかけになりました」「入社後の未来設計を加速させられる機会となった」「マイテーマを更新しながら、自分の原点に立ち返ることを大切にしたい」

といった声を聞いていくと、入社時点でキャリアを考えることについての意義を感じました。

入社後ではなく、“入社時”という節目に、キャリア開発の研修や仕組みを設計することは、「会社を辞めさせない」という組織の論理を押し付けることなく本人の能力開発に寄与できるように感じています。

とはいえ、大切なのはこの後の現場での取り組みです。

イマドキの若手世代を支援する仕組みとして、「業務支援」に加えて「キャリア支援」の役割を上司・人事が担うことや、評価・異動との連動を設計し活用方法を伝えていくことも重要です。

組織と個人の関係性が変化するこの時代において、「社員を拘束すること」ではなく「社員の成長を第一に考えること」を追求していく取り組みが大切なのかもしれません…「なんとなく働く」から「問いをって働く」という若手世代を育てるこの取り組みを、今後も模索していきたいと思います。

高橋 政成

高橋 政成

Masanari Takahashi

大学を卒業後、人事コンサルティング会社(株)シェイクへ入社。研修プログラム開発、コンサルティング営業として、100社以上の人材育成に携わる。トップセールスを達成した後、最年少マネジャーへ昇格。その後、既存事業と兼務で、大学向け教育の新規事業を立ち上げ。2016年、大学・採用・組織開発の領域から、新たな価値を創るためにOriginal Point株式会社を設立。

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