大学キャリア教育 事例
【大学初年次キャリア教育】動画 × オンライン × リアルで創るイマからはじめるキャリアゼミの挑戦
『キャリア支援は就活前にこそ価値がある』
そんな想いから聖学院大学様で本年度から立ち上げた、大学初年次キャリアプログラム「イマからはじめるキャリアゼミ」通称イマゼミ。
これからのキャリア教育・支援のあり方を模索するうえで、ご一緒に立ち上げさせていただいた聖学院大学キャリアセンター様の取り組みについて振り返りました。
なぜ、就活前の初年次キャリアなのか?
Q. 初年次のキャリアプログラム『イマゼミ』の立ち上げ背景を教えて下さい。
山田:立ち上げ前は、5つの学科それぞれで低年次のキャリア支援が行われていました。一方で実施頻度やアプローチ方法については学科毎で異なっており、そこに対してキャリアセンターとして何かできないかと考えていたことがはじまりです。
初年次の学生と接し、「社会に対する興味のアンテナが立っていない」「自己肯定が低く、自ら動きだす力に課題がある」と感じていた中で、偶然Original Pointとの出会いがあって立ち上げに至りました。
枦淵:大学3年生の就業観の希薄さというのも問題意識の一つですね。大学3年生のキャリア支援においては、ここが必ず一つの課題になります。就活におけるテクニック的な支援は可能ですが、「そもそも、なぜ働くのか?」「働くとは何か?」「どんな人生を過ごしていきたいか?」といった就業観を育むことはハードルが高いです。
働くということへの定義ができておらず、結果、「今、大学で何のために学んでいるのか?」ということも曖昧なまま就活の時期まで過ごしてしまうということも往々にあると感じてます。ただ、いつまでもキャリアセンターとして見過ごす訳にはいかなかったこともあり、イマゼミの立ち上げに至りました。
動画 × オンライン × リアルで創るイマゼミとは?
Q. それらの課題意識の中でイマゼミを実施してみて、率直にどう感じましたか?
山田:大学1年生に対して、将来の働くことや就活につながる内容に、噛み砕いてお伝えいただいていたのが印象的でした。大学1年生向けのアプローチ方法を明確にすることができ、私自身も勉強になりましたね。
枦淵:イマゼミ全5回のオンラインプログラムでは「働く=価値を提供すること」ということを、様々なワークや対話を通じて発信し続けていただいて、就業観を明確にするきっかけになったと感じています。「働くことをポジティブに捉えられるようになった」という学生のコメントも印象的で、これはこのプログラムの一つの成果だと感じています。
来年度のプログラムにおいては、より講義の学びを日常にアクションにつなげる後押しができればと考えています。
※学生の声(アンケート一部抜粋)
イマゼミを受講し、働くことへのイメージが変わりました。働く=辛い、疲れるだけというマイナスなイメージを抱いていましたが、働くことは楽しくできると学びました。視野を広げ、新たな知識を持つことができたイマゼミはとても充実感のあるものだったと思います。今後もこのような機会があれば参加したいと考えています。イマゼミに参加する前は働くということ、またはその関連のことについて避けてきたり、あまり考えることはなかったです。しかしイマゼミをきっかけとしてポジティブなものに変わり、以前よりも考えることが多くなったり、家族とも嫌な顔せず話せるようになりました。ありがとうございました。
コロナ禍での「動画」を活用したキャリア支援の効果とは?
Q. 5回のプログラム実施前に、全学科に動画での授業も展開しました。手応えはいかがでしたか?
山田:授業の入り口として非常によかったと思います。興味を惹く動画のタイトルや時間設定においても学生にとって見やすかったと感じています。私自身も車通勤の中で聞いたりしていました(笑)
枦淵:イマゼミを通じて、Step1:動画をみる → Step2:オンラインでの5回のイマゼミ →Step3:リアルでのビジネスシミュレーションというステップは、学生にとっても着実に学習ステップが踏めたと思いますね。
※学生の声(アンケート一部抜粋)
Q.大学と社会人の違いとは?
自分が思う大学と社会の違いは、自分で道を開拓していく面で違いがあると思います。大学で学んだ色々な知識や経験を最大限に発揮して自分のやりたい事や、答えのない事柄について向かっていくからです。正解のない社会へ行くのは恐怖心などもありますが、その恐怖心に打ち勝つことが出来るようなスキルを身につけられたらいいなと思いました。Q.マイテーマの動画を視聴しての感想は?
●●さんの動画を視聴して自分の成長が会社に繋がるという考え方に惹かれました。そして、やりたいことが見つからないという若者に対して、それは決して悪いことではないといい、何かに流されてみるのも一つの手だという言葉も印象に残りました。
Q. ビジネスシミュレーションの手応えはいかがでしたか?
※ビジネスシミュレーション:1日で働くことを体感できるプログラム。ある会社の社員として上司と協力しながら顧客に企画営業をする中で、実際の価値提供のプロセスを学んでいただきます。顧客へのヒアリングや自分たちなりに考えた企画を顧客に提案する中で、働くとは何か?顧客に価値提供するとは何か?を体感いただきます。
山田:1日働くということを疑似体験する訳ですが、内容は簡単でもなく、難しくもなく、学生にとっては程よい挑戦機会になったと思います。
ウォーミングアップの報告書を作成するというワークではまとめられていなかったチームも、本番のワークにおいて変化もみられて安心しました。参加メンバーにも恵まれていたと思いますね。
これからのキャリア支援において目指すこと
Q. 今後のキャリア支援として力を入れていきたいことは?
山田:これまでの取り組みを広げていきたいという気持ちはありますね。大学1年生に対する「社会への興味喚起を促す機会」や「一歩踏み出すことを後押しする機会」を増やしていきたいですね。
枦淵:大学卒業後に「どんな場所に身を置いて、誰のために役に立つのか」ということを考えるきっかけを提供したいなと思っていますね。
働くということへの自分なりの定義付けがあれば、自ら就活やその先の人生を歩んでいけると考えていますし、学生本人がもっともっと自分の人生に期待してくれることを目指したいなと思っています。
山田:大学選択の中で自分で選択した感覚がなく、なんとなく入学する学生も一定数存在します。そんな学生に対して、この4年間で意識変容・行動変容を促すための鍵がなんなのかは、これからも模索してきたいですね。
インタビュー後記
1年間の取り組みを通じて、学生の想いを徐々に焚き付けていくイマゼミでの取り組み。
1年間の集大成であるリアル実施でのビジネスシミュレーションでは、「高校生以来の対面授業です!」という学生もいて、学びの場のあり方が変化した1年だったことを実感致しました。
このプログラムは、動画やオンラインにおいて様々なロールモデル(社会人)との出会いがあり、その中で「これを大切にしたい」「自分も挑戦したい」といった想いを育む機会になったのではと感じています。
一方で、オンラインという不慣れな領域に一歩踏み出すことの難しさは、想定以上に感じている学生も多かったとも実感しております。制約条件の中で「学びを最大化できる次の1年は何のか?」ここを探究していきたいと思います。
Masanari Takahashi
高橋 政成
大学を卒業後、人事コンサルティング会社(株)シェイクへ入社。研修プログラム開発、コンサルティング営業として、100社以上の人材育成に携わる。トップセールスを達成した後、最年少マネジャーへ昇格。その後、既存事業と兼務で、大学向け教育の新規事業を立ち上げ。2016年、大学・採用・キャリア開発の領域から、新たな価値を創るためにOriginal Point株式会社を設立。