大学キャリア教育 事例
大学の初年次教育に、まずはマイテーマ!?これからの初年次教育のあり方を考える
先日、学習院大学経済学部の授業「スタディスキルズ」で出張ハタチのトビラを行ってきました。
授業名である「スタディスキルズ」とは、新入生のみなさんが、高校から大学へ、「生徒」から「学生」へと円滑に移行し、豊かな学生生活を送るための知識や考え方、またはそれを学ぶための授業のことです。大学全入時代や、学力・学ぶ意欲の低下が指摘されるなかで2000年代からいわゆる“初年次教育”として導入する大学が増えています。
今回は、この初年次教育の現状を踏まえつつ、これからの時代に必要な初年次教育のあり方を考えていければと思います。
初年次教育の現状
現在ほぼ全ての大学で実施されている初年次教育は、大きく3つの目的で行われています。
1、 大学や大学生活への適応、不安解消
2、レポートの書き方や文献探索方法など、大学で必要な最低限の学習スキルの獲得
3、高校までの受動的な学習態度から、能動的な学習態度への転換
私自身も大学入学オリエンテーションのような位置づけで、上記のような授業を受けたような記憶があります。
上記のような目的を踏まえた上で、「3、高校までの受動的な学習態度から、能動的な学習態度への転換」が上手く図られている大学は実際どのくらいあるのでしょうか?
これまでの大学生との交流や教授の方から伺った内容をもとにした完全なる私個人の感覚値になってしまうのですが、印象として、能動的な学習態度へ転換ができているケースは稀なのではないかと思います。
知識学習から経験学習へ
なぜ、能動的な学習態度への転換が難しいのか?
高校までの学校教育では、大学受験をゴールに知識をインプットし、偏差値で評価される世界だったからです。つまり、学び方の主軸となるのは知識学習であり受動的な学習態度が定着しているからです。
しかし、社会人になっての評価軸は、偏差値ではなく経験値になります。大学生活は、社会人生活への移行期であり、知識学習から経験学習へ学習スタイルを転換していく大切な時期でもあるのです。
これを見据えて、初年次教育でも経験学習や能動的な学習態度への転換を行っていこうとしているようですが、学生にストレートに正論をぶつけても響きにくいのが現実です。
それは、学生達にとって、経験学習を行う目的や能動的に学ぶ目的がないからなのだと思います。
マイテーマは経験学習を回す目的になる
弊社では、個人が社会の中でキャリアを築くこれからの時代の中の軸となるものとして、「マイテーマ」という概念を提唱しています。
マイテーマとは、自分の興味と意志からつくられる「私が、探求したいこと」です。
学生の悩みでよく出てくる「やりたいことがわからない」の「やりたいこと」とは違い、誰もが持っている個人的な探求テーマです。
このマイテーマを探求していくことは、大学生活をはじめ、今をより充実させるための行動が促進され、それにより個性が際立ち、キャリア選択や就活の指針、人生における指針にもなると考えています。
実際の出張ハタチのトビラでは、社会人のマイテーマのプレゼン動画をみたうえで、マイテーマへの理解や自分の興味の幅を広げていただきます。
その上で、自分の興味をワークシートを活用して可視化し、メンバーと対話をしながら、1ヶ月のマイテーマを決めていただきます。「自分のやりたいことをみつけるには?」「人の心を動かす接客とは?」「幼児教育の可能性とは?」等々、学生によって様々なマイテーマを設定いただきます。
1ヶ月で単位で探求するマイテーマに対する「考えたいこと、行動したいこと」を定め、1ヶ月後に「行動の振り返り」と「新たなテーマの設定」を行う一連の探求行動を促していくことは、まさに能動的な学びの目的になります。
マイテーマ探求は経験学習サイクルそのものになっているのです。
※社会人のマイテーマの例
マイテーマと大学での学びの親和性
高校までの「教科書に沿った勉強で、理解度をテストで確認するというような正解探しの学び」とは違って、大学での学びは「自ら問いを立て、自分なりの答えを出し、どうしてその答えが妥当なのかを論証すること」が求められています。
マイテーマは、この大学での学びを初年次から学生に実施してもらうのに、非常に有効なのではないでしょうか?
自身のマイテーマを探求するために、受ける授業を選び、どのゼミに所属するかを考える。授業だけではなくて、大学外ではどんな経験をしようか、マイテーマを軸に考える。
卒業論文も、マイテーマをアカデミックな視点から考える機会として活用する。
マイテーマと大学での学びの親和性は高く、マイテーマがあることで大学生活はより充実したものになると私は考えています。今回の出張ハタチのトビラでは以下のような感想を参加者の方からいただきました。
私は今、大学3年なので就活に向けて色々考えています。そんな時期にハタチのトビラを見て、働き方や働くということについて「あ、こういう考えもあるのか」と思いました。また、動画に出てきた方々は、きっかけは様々でしたが、未来を見据えて行動できてること自体が私の中では凄いことだし、見習いたいと思いました。
また、授業の最後にやったグループワークでは、来月というとても近い将来についてそこまで計画なり考える事をしてこなかったので、とても良いきっかけになりました。このハタチのトビラが自分にとってポジティブな影響を与えてくれたので、自分で考えベストな将来に対する選択肢を選びたいと思いました。ありがとうございました。
※学習院大学のスタディスキルズでは、3~4年生も受講しており、3〜4年生にとっては「社会に出るにあたって、卒業の学び方や生き方」について学ぶ機会にもなっているようです。
現在は、毎月20日にマイテーマを考える学生向けイベントを企画している弊社ですが、今後は大学内の初年次教育でも、キャリア教育と絡めて研究していく予定です。
Mizuki Muraoka
村岡 瑞妃
大学卒業後、1年間東京都の小学校教員として担任を務める。その後、エン・ジャパン(株)に転職し企業の採用支援や評価・教育研修サービスの提案営業を行う。現在は、Original Pointへ参画し、大学キャリア教育や新卒採用領域の事業推進に携わっている。