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探究レポート

20代のキャリア開発

調査から紐解くキャリア開発3.0とは?これからのキャリア開発と若手研修について、東京経済大学 小山准教授と考える。

HRサミット2020に「調査から紐解くキャリア開発3.0とは?-withコロナの若手育成と研修設計-」と題して、東京経済大学 小山准教授と登壇してきました。(動画講演のため10/9まで視聴可能:HRサミット

コロナの影響によって、意味のない研修が淘汰されていく流れは間違いなくいいことだと思いつつ、「そもそも、自分たちOriginal Pointの存在意義はあるのかなぁ?」という問いと中二病のように向き合っております。

改めて、キャリア開発というものを再定義したいと考えたときに「日本におけるキャリア研究は、米国で構築されてきたキャリア理論をベースに取り組まれることが多く、日本発の視点で取り組まれた研究は極めて少ない」と問題意識を感じられている小山先生の顔が浮かび、対談をさせていただきました。

人事・経営者の方々がおそらく向き合っているであろう問いをぶつけまくっておりますので、改めて人材育成施策を再定義したいという方には必見でございます。

組織内におけるキャリア開発・研修の意義とは?

高橋:組織におけるキャリア開発の意味・意義を教えてください

小山:キャリア開発の意味・意義は大きいと思っています。変化の激しい時代になってきたからこそ、その意義は高まっていくと思っています。

スキルレベルは、オンラインで学べることがたくさんある中で、より本質的な支援が必要なのは「キャリア」の領域です。

一人ひとりに個別対応していきながら「今いる環境でどのように自分を成長させていけるのか?」という、まさに意味付けできるかが重要だと思っています。ここは、簡単e-Lerningできるものではありません。

一昔前、「キャリア開発研修をすると離職する人が増えるのではないか」という議論がなされていましたが、私はそうは思っていません。

本質的なキャリア開発支援をすればするほど、「エンプロイアビリティの高い人材」にとって組織は魅力的にうつります。

高橋:そういう意味では、キャリア開発を組織内に浸透させていく必要がありそうですね。キャリア開発を浸透させていくにあたって、有効なタイミング等はありますか?

小山:そうですね。ただ、各々の組織によってキャリア形成上の課題によって有効なタイミングは変わってきます。

自社の社員のニーズ・課題はなにかを見極め、そこに対して手を打っていくことが必要です。そういう意味で、節目に限らず、新入社員であったとしてもキャリア開発は有効だと思っています。

若手のキャリア自律を育むには?

高橋:若手本人の「変化適応力(キャリアアダプタビリティ)」を育み、しなやかなキャリア形成をしていくためのポイントはありますか?

小山:まずは、サポーターがいる安全な状況下で“リアリティショック”を受け、その中で自分を成長させていくという経験が重要だと思います。

逆説的ですが、“予期せぬ変化が当たり前”の時代になります。

予期せぬ事態が起きた時に「どんな状況でも自分は前に向かって前進できる」という自信を高めることができれば、しなやかなキャリア形成が可能だと思います。

高橋:そうすると今回のコロナ・ショックのような予期せぬ状況を「貴重な機会」だと捉えることができますよね。

小山:そうですね。若手社員が“入社当初からある自分のキャリア観”に拘る理由は、漠然とした不安が大きいからです。

予期せぬ変化の中で、自分を成長させる経験ができれば、不安を和らげたり、不安と同居したりすることができ、もっとしなやかに対応することができると思います。

1on1によるキャリア面談は有効か?

高橋:コロナ禍においてはより「1on1」への期待が高まると思いますが、ポイントはどんなところですか?

小山:テレワークが日常的になっている中では「1on1」が実施しやすい状況になってきたのでこのまま浸透していくといいなと思っています。

ここでひとつ考えていくべきポイントは、形式的な「1on1」にならないようにする、つまり「報連相をする」という風にならないようにすることです。

通常の報連相では話題にならないキャリア形成上の悩みや、直接今の仕事とは関係ないけれど、漠然と抱えている不安を一緒に話すというのが本来の「1on1」だと思います。

高橋:「1on1」の実情は業務報告になりがちですよね…

小山:そうなんです。Original Point(株)さんが提唱されている「マイテーマ」について、「1on1」の際に話すというのは非常に有効的だと思います。 ※「マイテーマ」とは“興味から探求していきたい問い”を定期的に更新していく考え方のこと

部下の個別の「マイテーマ」を共に言語化し、それを支援し続けることが大切だと思っています。

是非、一人ひとりのキャリア形成に繋がるコミュニケーションを「1on1」で行っていただきたいと思っています。

ロールモデル不在の中でのキャリア開発とは?

高橋:副業や兼業など、働き方が多様化している中では、“ロールモデル不在”に陥るケースがあります。それについて組織の向き合い方があれば教えてください。

小山:私も同じような声を現場からきくことがあります。

これだけ変化の激しい時代の中で前向きに自分のキャリアを開発している方は「エンプロイアビリティ」が高い方です。そういう方は、組織としても重要な人材ですよね。

人事や社内のキャリアコンサルタントの方たちが「しなやかにキャリア形成をしているのは誰なのか」ということを把握して、その方たちをロールモデルとして広く発信していくことができると思います。

例えば、社内広報誌やオウンドメディアで発信することで、社員、社外、もっと言うと就活生に対しても発信していくことができます。貴重な人材だからこそ、組織としてエネルギーをかけて「ロールモデルを示していく」アプローチが大切だと思います。

キャリア研修の効果測定をどうみるか?

高橋:「キャリア研修の効果測定をどうみるか」という点においてはどのように考えていますか?

小山:難しいところですよね。「すぐに効果がでるものは本当にキャリア研修と呼べるのか」という問題はあると思っていますけれども(笑)

一つは、「キャリア研修のゴールをどこに置くか」というところから考えていくことです。少なくとも社内で行うキャリア研修で目指しているところは、「研修後に社員が自分の仕事に戻った際に、仕事に前向きに取り組む」ことにあると思います。与えられた環境の中で「どれだけ主体的・能動的にチャレンジできているか」という観点はひとつの測定指標になり得ると思っています。

もう一つは、自分の仕事に対する「納得感」も指標になると思います。「自分にとって重要な仕事である」という納得感を得られているかという点ですね。そのような納得感を得られているのであれば、与えられた仕事に対する“意味付け”が出来ているということになります。

キャリア開発の制度を整えていくにあたって

高橋:キャリア開発における仕組み・制度を整えていくにあたって、その他ポイントを教えてください。

小山:明確な答えを持っているわけではないのですが…大事だなと思っているのは、「組織全体でキャリア支援していく風土をつくっていくこと」です。

設置されたキャリア支援の部署だけが担うものではなく、“組織全体でやる”というところがポイントです。例えば、経営層のリーダーシップ、マネージャーの役割、目標管理制度、評価項目など、人事のメカニズム全体の中にキャリア開発支援を組み込んでいけるかどうかが本質だと思っています。

高橋:単に制度を入れたから機能するわけではなく、全体設計が大事になってくるということですね。

小山:そうですね。ただ、そうすると取り組むのが難しいという人事の方もおられるのかなと思うのですが、「こういうことをやるべきだ」と思った人が、その人の立場、権限の範囲内で「まずはやってみる」ということが大切だと思います。

トップダウンでもボトムアップでのアプローチでも、まずはやってみるということが現実的に重要だと思います。

コロナ下における人事の役割とは?

高橋:最後に、コロナ禍における人事の担うべき役割や、今後に向けてのメッセージをお願いします。

小山:今、変化を求められていると思います。変化を前提としてキャリア形成していかねばならないということもそうですし、人事・組織においても、変化に対応した新しい仕組み・制度を構築が求められています。

アジャイル人事(※トライ&エラーを高速に繰り返して人事)を再構築していくという考え方が非常に求められています。

従来の人事機能やキャリア開発の仕組みがどう機能していないのか、若手社員の声をきき、若手社員の立場に立って施策を考える。そして、その施策を打った後の反応までコミュニケーションをとりながらみていくことを大切にしていただきたいなと思います。

人事的な情報が集まるので上から目線になりがちになってしまうのですが、そういうセクションだからこそ、同じ目線に立って考えていくといいのかなと思います。

キャリア開発3.0を示唆する対談を終えて

コロナによって数年先を描くことが更に難しくなった今…経験の棚卸しをして「Will-Can-Must」にあてはめる旧来型のキャリア開発アプローチは難しくなりつつあるのではないでしょうか…

「数年先の理想を書き込むキャリアシートを活用した面談」も、上司のキャリア観がアップデートされてなければ、若手社員は苦痛の時間を過ごすしかありません…

キャリア開発3.0というコンセプトには、これまでのアプローチを時代に合わせてアップデートしていきたいという想いが込められています。

講演動画については具体的なアプローチについても触れておりますので、より理解を深めていきたい方はそちらもご視聴くださいませ(HRサミット

また、弊社HPにて「キャリア開発会議シート」がダウンロードできます。社内の議論にお役立ていただけますと幸いです。

高橋 政成

高橋 政成

Masanari Takahashi

大学を卒業後、人事コンサルティング会社(株)シェイクへ入社。研修プログラム開発、コンサルティング営業として、100社以上の人材育成に携わる。トップセールスを達成した後、最年少マネジャーへ昇格。その後、既存事業と兼務で、大学向け教育の新規事業を立ち上げ。2016年、大学・採用・キャリア開発の領域から、新たな価値を創るためにOriginal Point株式会社を設立。

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