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探究レポート

キャリア教育 事例

地元で学ぶ!行政が取り組む産学官連携のキャリア教育とは?〜ジョブシャドウの可能性を考える〜

2019年夏、埼玉県三郷市と埼玉県春日部市との協働事業として、「高校生向けジョブシャドウイングプログラム」の事前学習会、事後学習会をそれぞれ実施いたしました。

ジョブシャドウイングとは、会社やお店などで「働いている人」に影のように密着し、普段の職場の様子を見て「職業観」や「しごと観」を養い、自分のこれからの学びや進路選択の一助にする教育プログラムです。学校教育でのキャリア教育といえば、2000年代からはじまった職場体験が広く普及していますが、ジョブシャドウイングは職場体験と違い、「働く人を観察すること」に重きを置いています。

今回のジョブシャドウイングプログラムは、高校生が夏休みである7月下旬〜8月下旬の期間に合わせて行われました。7月下旬に事前学習会、ジョブシャドウイングを経て、8月下旬に事後学習会、という流れになっています。

働くってなんだろう?考えを深めた事前学習会

「働く」=「お金を稼ぐこと」?

事前学習会では、高校生が抱く「働く」に対するイメージを共有し合うことから始まりました。みなさんは、「働く」というと、どのようなイメージを持つでしょうか?

「お金を稼ぐ」「忙しい」「大変」「疲れる」・・・

実際に高校生たちから出てきたのは、このようなマイナスイメージばかり。確かに、普段テレビのニュースや親ぐらいしか、「働く」に関する情報源が無いことを考えると当たり前なのかもしれません。頻繁に報道される過労死や「今日も疲れた〜」などと言っている親の言葉を聞いていると、マイナスイメージしか思い浮かばないことも容易に予想出来ます。

そんな中、事前学習会では、高校生たちが違う切り口で「働く」を捉えられるように“働くって何だろう?”という問いに対して深めていきました。

「働く」の定義をたどったり、企業理念について学んでみたり、弊社で映像化している各社会人の働く様子(ジョブシャドウイング動画)やその社会人が語る仕事に対する想いに触れたり・・・様々な観点から「働く」に関して考えていきました。

そうして、事前学習会の最後にもう一度聞いてみたこの問い。

高校生たちから出てきた回答はこちらでした。

  • 働くとは、誰かの役に立つこと。
  • 誰かの役に立って、それに対して報酬が得られること。
  • 働くとは、大変なだけじゃなくて、自分の成長にもつながること。

一番始めに出てきたイメージとは違い、“誰かの役に立つこと”を意識するようになった高校生たち。これまでは、自分視点から「働く」ことを捉えていた様子でしたが、サービスを受け取る相手や、社会でのその仕事の必要性を想像することにより、「働く」ことへの視座が上がった様子が伺えました。

ジョブシャドウイングプログラムの可能性

昨今、キャリア教育業界は、学習指導要領改定の影響もあり、非常に活発化しています。
弊社も取り組んでいる大学生向けキャリア教育は、就職活動対策とも相まって、毎年新しいサービスが立ち上がり、キャリア教育系イベントも乱発している状況です。

このような状況を見ていると、「本当に必要なキャリア教育って何だろう?」という疑問が生まれてきます。参考までに、文部科学省によるキャリア教育の定義を読んでみると、下記のようになっています。

「キャリア教育」とは、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」である。
(中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」[平成 23 年1月 31 日])

ここで言う“キャリア発達”とは、「社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現していく過程(中央教育審議会、前掲書)」のことです。こうして考えてみると、改めて実施していくべきキャリア教育とは、生徒が自立して将来を歩んでいけるように、意志を育むとともに、社会の中における自分の役割を認識していくことの支援ではないでしょうか?

また、平成29・30年に改訂された新しい学習指導要領では、これからの教育課程の理念として、「社会に開かれた教育課程」を謳っており、社会全体で教育に取り組むことが推進されています。
(平成29・30年改訂 学習指導要領、解説等「改訂のポイント」よりhttp://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/09/30/1421692_4.pdf

なぜか、“教育と言えば学校”のように考えられがちですが、キャリア教育を専門にご研究されている法政大学の児美川教授も述べているように、教育は社会全体で行うものであるという点で、今回は「産学官連携」が行われています。

行政が主催し、地域の各企業が協力、高校が生徒にプログラムを紹介し、高校生が参加する。

あらゆる機関の相互連携・協働によってジョブシャドウイングプログラムは行われており、これからのキャリア教育における手法として大きな可能性を秘めているのではないでしょうか?

社会には様々な教育リソースがあります。それを活かすことが、これからのキャリア教育を実践していく上での鍵になりそうです。

ジョブシャドウイングプログラムに参加した高校生たちの“マイテーマ”

「働くとは、誰かの役に立つこと。」
このような視点も持って、各自ジョブシャドウイングに向かい、体験を経た後に実施した事後学習会では、お互いに感想を共有するとともに、これからの将来や残りの高校生活について考える機会を設けました。

▼ジョブシャドウイングの感想はこちら(抜粋)

  • 仕事というものがどのようなものかわかったし、大変というイメージから人を笑顔にするものだというイメージにガラッと変わった。
  • ベテランの保育士さんでも苦戦する場面はあるのだなと思った。
  • ジョブシャドウイングをして、働くことに興味を持ちました。
  • 広報の仕事に密着して、実際に見ないと仕事の本質はわからないと感じた。
  • 誰も気づかないような所まで丁寧に庭園を整えていて、感動した。
  • ジョブシャドウイングをして、世の中に対して好奇心を持つようになった。
  • 社員さんが、本当に施設の利用者のことを一番に考えて仕事をしていてすごいと思った。

実際に、高校生のみなさんが感想を発表する様子を見ていても、非常にイキイキと話していて、仕事の面白さや奥深さをリアルに感じ取った様子が伺えました。

社会には様々な選択肢があり、その選択の連続が人生です。高校時代というのは、親や周りの友達、先生など、色々な人から色々なことを言われ、時に自分を見失いそうになることも多い時期かと思いますが、一つひとつの選択をしっかり自分で考えて決断していくために、弊社で開発したマイテーマワークを通して、自分なりの選択をしていくための指針“マイテーマ”を高校生たちに言葉にしてもらいました。

「自分の興味を探求する問い」と定義している“マイテーマ”ですが、今回はマイテーマの定義を「興味から生まれる、自分と社会をつなぐ問い」と高校生向けに編集しています。

以下が、今回出てきた高校生たちのマイテーマです。

  • 今の自分が誰かのためにできることは?
  • コミュニケーション能力を身につけるには?
  • 人との交流で、自分を成長させるには?
  • 人が楽しめるようなデザインとは?
  • 子どもたちが成長しやすい環境をつくるには?

自分の苦手なことに改めて目を向けている子もいれば、興味をもった職業について焦点を当てて探求していこうとしている子もいて、多様な“マイテーマ”が出てきています。

自分の人生は一度きり。より充実した後悔のない人生を送れるよう、今回定めたマイテーマを日々意識し更新しながら、意図的な毎日を過ごしていってほしいと思います。

参加した高校生のみなさんのこれからのキャリアが、実りあるものでありますように!

※写真は全て、埼玉県三郷市で実施したものを使用

村岡 瑞妃

村岡 瑞妃

Mizuki Muraoka

大学卒業後、1年間東京都の小学校教員として担任を務める。その後、エン・ジャパン(株)に転職し企業の採用支援や評価・教育研修サービスの提案営業を行う。現在は、Original Pointへ参画し、大学キャリア教育や新卒採用領域の事業推進に携わっている。

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