
3つの事業のシナジーで若手キャリアの“可能性”を広げたい【起業の背景と事業の強み】
「ケーキ屋さんになりたい小学生は見るけど、コンサルタントを目指す小学生は見たことがない……」
今回お話を聞くのは、早期に “将来の選択肢” を知ることの重要性に気づいて起業した、Original Point代表の高橋政成さん。
人事コンサルティング会社での経験と熱い想いから、数々の研修プログラムやこだわりの動画を生み出し、Original Pointのサービス全体を創り上げています。
そんな高橋さんが起業に至ったきっかけは?
展開中の事業の特徴や強み、その先で目指す世界とは?
腰が低すぎる不思議な社長の、熱いこだわりを聞いてみました。
高橋政成
大学卒業後、人事コンサルティング会社である(株)シェイクへ入社。研修教材開発とコンサルティング営業で、100社以上の人材育成に携わる。並行して新卒採用も5年間担当。トップセールスを達成した後、最年少マネジャーへ昇格。並行して取り組んでいた大学キャリア教育事業に専念すべく、2016年にOriginal Pointを設立。
「やりたいことがわからない」大学生に訪れた転機
―「大学キャリア教育」への関心は、どんなきっかけから生まれたんですか?
まず、僕自身が学生時代に直面していた「やりたいことがわからない」という悩みが原体験としてありました。
「お前のやりたいことはなんだ?」
大学進学のタイミングでそう聞いてきた父は、航空会社の技術者として“やりたい”を仕事にしてきた人でした。けど自分のやりたいことが見えていなかった僕は、その問いにはっきりと答えることができなかったんです。
そんな苦い記憶がひとつのきっかけとなって、大学のゼミで「大学キャリア教育」と出会い、より問題意識が膨らんだのがきっかけです。
ちなみに、ゼミの先生の専門は「農学」なのですが、研究テーマはなんでもOKという不思議なゼミでした(笑)。
― 大学キャリア教育に出会って膨らんだ「問題意識」とは?
ゼミと就活を行き来する中で、当時の僕が導いた結論は「そもそも “将来の選択肢” を知らないと、本当に自分に合ったものを選べない」ということでした。
「日常の生活で触れることのない “将来の選択肢” を知る機会が広がれば、それだけ人の可能性が広がるのでは?」と考えました。
就活が始まるよりも前の「大学キャリア教育」の段階で、様々な業界・仕事・選択肢を知っておくことが、とても重要なのではないかと思ったんです。
大学で教職課程も取っていましたが「学生にキャリアを伝えて価値を発揮するのなら、まずは自分が将来の選択肢を知らなければ」と思い、様々な業界を俯瞰しながら人や組織の成長に関われる「人事コンサルタント」をファーストキャリアに選びました。
社会人になる前に “働く” と向き合うことの意義
― 人事コンサルタントの経験は、今の事業にどのような影響を与えていますか?
「社会に出る前に、将来の“働く”と向き合うことの重要性」を実感した経験となりました。
人材育成に触れる中で感じたのは、若手が入社当初持っている熱い思いは、働くうちに失われてしまうということでした。一部上場企業のような大企業でも、就職希望ランキング上位の常連企業でも、状況はほとんど同じ。
新人社員研修では「これを実現したいんです!」と強く語ってくれたのに、1年後に再会すると「この会社で理想を実現するのは、無理だと思います」と、どこか斜に構えた様子で、夢や理想を諦めてしまう姿を何度も目にしました。
そういう若手に対して、研修などを通じて熱を取り戻してもらうような仕事をするうちに、働くことに対する「主体性」や「前向きさ」を、入社後ではなく入社前のタイミングで持ってもらえるといいのにな……と。
「世の中にはどんな選択肢があるのかな?」
「自分は何者で、どうありたいのか?」
「そもそも、働くってなんだろう?」
こうした “働く” に関する問いに、入社前から向き合う機会があれば、入社後のパフォーマンスも大きく変化するのではないか。そんなことを日に日に強く感じるようになりました。
大学キャリア教育事業に取り組む覚悟を持てたのは、大学時代という「社会人になる前の4年の準備期間」にアプローチすることで、学生の潜在能力を最大限に引き出せると確信したからです。
原点と未来を繋ぐ、Original Pointの3つの事業
― Original Pointの事業について教えてください
Original Pointの社名は、原点(origine)に立ち返ることが大切だという考えに基づいています。自分自身の原点と、その先の明るい未来を繋げることで、人がイキイキと活躍できる社会の実現を目指しています。
そんな社会を実現するために必要なのは、学生のポテンシャルと企業のポテンシャルを最大化させる、本質的なキャリア支援です。
こだわりとして、一般的に成り立ちやすいと言われている人材紹介ビジネスにはあえて手を出さず、市場そのものを大きく育てていくような仕事をしたいと考えています。
私たちが展開している事業は主に3つです。
◆ “学ぶ” と “働く” の選択肢を広げる「大学キャリア教育支援」事業
学生が自らキャリアを形成する力と、社会で価値を生み出す力を育むべく、産学連携型のキャリア教育授業を行ったり、大学生向けの動画メディアでリアルな情報を提供したりしています。
◆ リアルな “働く” を次世代に伝える「新卒採用支援」事業
学生がしっかりと判断して選べるよう、企業の良い面だけでなく、悪い面も伝えるリアルな情報開示を重視した「採用広報動画」を企画・制作しています。その他、インターンシップの設計や面接官トレーニングなども得意です。
◆ 次世代の働く土台づくりを支える「キャリア開発支援」事業
入社後の若手がリアリティギャップを乗り越えて主体的に活躍できるよう、キャリアとジョブ、両面のオーナーシップを育む研修を提供しています。同時に、若手を育てるOJTトレーナーや管理職向けの研修で若手をサポートしています。
このほか、東京経済大学と提携して産学キャリア研究所を設立しました。
◇ 産学キャリア研究所
日本の組織風土におけるファーストキャリアの支援に繋がる研究を行い、その研究成果を人事向けメディアなどで発表しています。
優秀なビジネスパーソンが学生時代にどのような経験を積んでいるか、リアリティギャップを乗り越える若手がどんな特徴を持っているか、職場でのサポートが若手にどのような影響を与えているかなどのテーマがあり、企業の人材開発・採用担当の方々のお役立ちにつながっています。
― Original Pointの強みは?
大学・採用・人材育成という、3つの事業領域の “相互作用” が非常に重要なポイントだと感じています。
“働く” のリアルを知っている我々だからこそ、より本質的な大学キャリア教育事業を展開できる。大学生を起点としたZ世代に触れているからこそ、新卒採用や人材育成にノウハウを還元できる。ここが強みだと考えています。
我々のMission「可能性を、ひらこう」を体現するために、大学キャリア教育の現場を起点に、次世代をつくる教育事業を広げていきたいと考えています。
― 最後にメッセージをお願いします
正直、綺麗事だけではうまくいかないのが教育事業だと思っています。
そもそも、大学キャリア教育の市場規模は13億。ビジネスとしての可能性は限りなく低い領域だと思います。ある意味、この市場で起業するのは博打だと思っています。
ただ、だからこそ大学キャリア教育に本腰をいれる企業が少なく、変わらぬ状況が続いているのだと思います。多くの学生はやりたいことがわからないまま社会に出て、その現実に打ちのめされて理想を失ってしまう。それをなんとか変えていきたい。
このインタビューだけでは語りきれませんが、これまでの小さな積み重ねによって、ようやく多くの人にお届けできる質の高い教育コンテンツとリソースが集まってきています。
改善の余地はいくらでも見つけられる未完成の組織ですし、経営者としてもまだまだポンコツなのですが……(汗)。純粋な想いを持って一緒にMissionを形にしてくださる方とお会いできると嬉しいです。
希望に満ちた “働く” をいっしょに作れる日を、楽しみにしています。