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採用・育成で効果を発揮する「ジョブシャドウイング」とは? 人事施策への落とし込みを解説

就活スケジュールの早期化や、採用・研修のオンライン化を含めた手法の変化など、採用・育成を取り巻く環境や価値観が大きく変化してきている昨今。

「ミスマッチの少ない採用を成功させたい」「早期離職リスクを軽減したい」など、人事担当者の皆さまも、日々戦略や戦術の見直しを検討されているのではないでしょうか?

そんな中、採用・育成など様々な場面において注目されてきている「ジョブシャドウイング」について、解説していきたいと思います。

ジョブシャドウイングとは?

ジョブシャドウイングとは、観察者が働く社会人の仕事の様子を1日観察、質問することでキャリア観を育むキャリア開発の一つの手法です。ジョブシャドウイングが取り組みの起点となった米国においては、学生に対してインターンシップの前段階の取り組みとして多くの企業で導入されています。

採用手法の一つとして注目されるインターンシップが「仕事体験」という定義に対して、ジョブシャドウイングは「仕事観察」という定義になります。

ジョブシャドウイングでは、社員の1日に密着し、個人作業、会議、商談、ランチといったあらゆるシーンに影のように付き添います。その中で、質問と対話を繰り返すことで、仕事において必要なマインドや考え方、企業文化に対する理解を深めることが可能となります。

インターンシップとジョブシャドウイングの違い

先の説明のとおり、インターンシップは「実際に仕事を体験すること」が目的ですが、ジョブシャドウイングは、「仕事をしている社員に密着・観察することで、仕事内容や必要なマインドを理解すること」を目的としています。

そのため、任せる仕事を準備し、場合によっては社員が伴走する必要のあるインターンシップに対し、ジョブシャドウイングは特別な準備は不要で、社員はいつも通り仕事を進められることも特徴といえます。

また、ジョブシャドウイングの参加者が社員の場合は社内育成、学生や求職者の場合は組織エンゲージメントを高める採用活動にも繋げることが可能です。

ジョブシャドウイングの効果とは?

キャリア開発の手法の一つとして取り組まれるジョブシャドウイングですが、社員の1日に密着・観察することでどのような効果が期待できるのでしょうか?

ジョブシャドウイングを大学キャリア教育の一貫として取り組んでいる東京経済大学での調査によると「将来のことを調べて考えたい」「将来、具体的に何をやりたいかを見つけたい」等と、ジョブシャドウイングを体験することで、キャリアへの関心度合いが増す傾向があることがわかりました。 ※参考:小山健太(2017)「ジョブシャドウイングのキャリア教育効果の検討」コミュニケーション科学

また、内定者研修の一つとしてジョブシャドウイングを取り入れたケースでは、働くことへの期待感を高めたり、リアリティギャップを予防したり、社員育成においても一定の効果も見込まれています。

『内定者期間に実際の仕事現場に密着することができ、新たな仕事の1面を知ることができた。密着したAさんのように、拘りをもった仕事を自分もしたいと感じました。』といった参加者の声からは“百聞は一見にしかず”といったジョブシャドウイングのインパクトを感じ取れると思います。

人事施策としてのジョブシャドウイングの活用方法

ここまでの話題から、ジョブシャドウイングを人事施策の一つとして活用するイメージが湧いてきましたでしょうか?

参加者にとってインパクトのあるジョブシャドウイングではありますが、展開する際のハードルとして、参加者が多かった場合にジョブシャドウイングを受け入れる社員・職場を確保することが難しいことが挙げられます。

ここからは、そんなハードルも踏まえた、ジョブシャドウイングの活用方法にについて、「採用広報」「内定者フォロー」「入社後の研修」の3つにわけて解説していきたいと思います。

採用広報におけるジョブシャドウイングの活用

先述の通り、候補者への自社理解の促進や、自社でのキャリアイメージの構築等を進めるべく、採用ステップにおけるインターンシップのコンテンツとして、ジョブシャドウイングを導入する企業も多くあります。

一方、候補者「全員」をジョブシャドウイングに参加させることが難しい場合、ジョブシャドウイングの様子を「動画」に収め、活用する方法が有効的です。

自社でのジョブシャドウイングの様子を動画コンテンツ化することによって、説明会やインターンシップにおいて働くイメージを湧かせる施策一つとして組み込むことができます。

また、ジョブシャドウイング動画は、自社の採用HPに動画を掲載することで、場所に限らず(地方のターゲットなどにも)自社の情報を届けることができるため、採用広報のコンテンツとしても有効となります。

▼(参考)ジョブシャドウ動画を活用したシチズン時計社の採用戦略とは

弊社では過去に「入社前の会社理解度がリアリティショックにどのような影響を与えるのか」を調査したことがあるのですが、「社員の働くモチベーション」や「会社の風土」の理解度の深さが、リアリティショックを緩和し入社後の学習スピードに寄与するという結果が出ています。

このようなソフトな情報については、社員が“説明して理解してもらうこと”以上に、“目で見て感じてもらうこと”の方が有効です。

内定者フォローにおけるジョブシャドウイングの活用

内定者研修でジョブシャドウイングを取り入れることは、リアルな職場や働くことに入社前から触れることにより、主体者意識の醸成やリアリティギャップの是正などを期待できます。

例えば、内定者をグループにわけ、社員の一日に密着して仕事を追体験することにより、「社内の雰囲気」や「業務イメージ」を立体的に感じ取ってもらいます。その過程で、ロールモデルのキャリア観に触れることにより、自社内でキャリアを構築するイメージを持たせ、働く目的の深耕やモチベーションの向上にも繋がる機会となります。

さらに、各グループ違う部署の社員へのジョブシャドウイングを実施してもらい、業務内容ややりがいなど、知った特徴を発表し合う設計にすると、内定者同士で体験の共有ができたり、発表することでより理解深耕に繋げることができます。

また、内定者の人数が多い企業における方法としては、ロールモデルに密着したジョブシャドウイングの動画を内定者全員で「視聴・対話」する仕掛けを内定者フォローや内定者研修の一つとして組み込むことも効果的です。

入社前に自社で働くことへの期待感を高めることの他、自社で働くキャリア観を形成することにもつながります。

▼(参考)ジョブシャドウを活用したavex流内定者フォローとは

入社後の研修におけるジョブシャドウイングの活用

入社後、目の前の業務に追われ、ふとした時に「本当に自分のやりたかったことなのか?」「自分はこの先どうしたいのか?」など、漠然としたキャリアの不安感を持つ若手に対しても、ジョブシャドウイングは有効的です。

自分のキャリアの棚卸や今後起こりうる社会・ライフステージの変化などを捉え、いくつかのシナリオを描くワークショップをしたのちに、自社のジョブシャドウイング動画を通して選択肢を提示するのです。

それにより、自社内のキャリアステップを立体的に見せ、「自分が得たいもの・大切にしたいもの」「自社で得られるもの・できること」を再整理させることで、働くことへの意味づけ、リテンションの効果を期待できます。

上記のような研修を取り入れられた企業様では、特に1~5年目ぐらいの若手において、突発的に「転職」を選択するケースを抑制することができました。研修によって、「自社で働く意味の再認識」や「社内での職種転換」等、社内にいながらできることの選択肢を理解できた効果だと考えられます。

「社内でも、何なら社内なら尚更」自分が掴みたい未来を創り出せると気付いてもらうことにより、自社で働く意味づけができ、離職率の低下につながるのです。

最後に

昨今のデジタルネイティブ世代とは、意味を問う世代とも言われています。ある程度満たされた環境で育ってきた彼・彼女らの思考として、「給与」「昇進」といったわかりやすい外的報酬以外に、「成長」「やりがい」「つながり」といった内的報酬を求めている現実があります。

つまり、「なぜ、やるのか?」「誰のための仕事なのか?」

その意味の腹落ちが、入社動機 や 主体的に働くこと への動機となります。

今回ご紹介したジョブシャドウイングというキャリア開発の手法は 「意味の腹落ち」に役立つものだと考えております。個人が組織を選ぶ時代において「自社で働く意味とは何か?」という問いは、必ず向き合わなければならないものとなっています。

皆様が改めて人事施策を考える中で、このレポートが、企業・個人の両者にとってより納得感の高いマッチングや育成を図ることのヒントになれば幸いです。

高橋 政成

高橋 政成

Masanari Takahashi

大学を卒業後、人事コンサルティング会社(株)シェイクへ入社。研修プログラム開発、コンサルティング営業として、100社以上の人材育成に携わる。トップセールスを達成した後、最年少マネジャーへ昇格。その後、既存事業と兼務で、大学向け教育の新規事業を立ち上げ。2016年、大学・採用・キャリア開発の領域から、新たな価値を創るためにOriginal Point株式会社を設立。

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