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大東文化大学 産学連携キャリアプログラム “DAITOキャリプロ”──企業・大学・学生がそれぞれに得た価値とは?

「学生時代にもっとも力を入れた経験は?」——就職活動でよく問われるこの問いに、自信をもって答えられないという学生は少なくありません。そんな課題に向き合うべく、Original Pointと大東文化大学キャリアセンターと連携し実施しているのが、産学連携型キャリア教育プロジェクト「DAITOキャリプロ」です。

「DAITOキャリプロ」は将来について真剣に考え始める1・2年生を対象に、春・秋の年2回、全21コマ開講しています。企業から与えられるリアルな課題にチームで取り組みながら、働くことへの社会理解と自己理解の機会を生み、実践的な学びを深めていきます。

2025年度前期のタームでは食品スーパーマーケットチェーンの株式会社ベルクに協力いただき、「目指せ商品化!Z世代にささる商品開発(アイス・和菓子)」というお題に取り組みました。

本レポートでは、その最終プレゼンの様子に加え、参加学生・協賛企業・キャリアセンターそれぞれへの取材をもとに、キャリプロがもたらす学びの手応えをお届けします。

リアルビジネスに接続するZ世代の提案──ベルクの現場も注目した最終プレゼン

2025年度のDAITOキャリプロには、大東文化大学の1・2年生70名と8名の学生メンターが参加し、4月から9回のワークを経て、7月の最終プレゼンテーションに臨みました。

各チームには、キャリプロの卒業生でもある学生メンターが1名以上つき、グループワークを通じて受講生の悩みや不安に寄り添いながら、発想や行動の後押しを行っています。経験者だからこそできる伴走型のサポートが、学生の挑戦を支え、安心して取り組める学びの場づくりにつながっています。

最終プレゼンの企画提案では、株式会社ベルクのプライベートブランド商品として「アイス」または「和菓子」を企画するというお題が出されました。濁音を活かしたユニークなネーミングや、ただ食べるだけでなく誰かとシェアしたくなるような消費行動を意識した提案など、Z世代らしさを存分に活かした具体性と独自性のある企画が多数見られました。

 

具体的な商品名や味、価格まで提案を行う学生たち
具体的な商品名や味、価格まで提案を行う学生たち

発表ごとに行われる企業からのフィードバックでは、「もし開発するとしたらなんですが」と商品開発で再現する上でのレシピを掘り下げられるチームや、「よくベルクのことを調べてくれているなと思いました」と高く評価されるような場面がありました。また、某企業の未発表の新作商品と類似する提案もあり、審査員から驚きの声が上がるシーンもありました。

 

メニューの具体的なレシピについて企業から質問されるチームも
メニューの具体的なレシピについて企業から質問されるチームも

最終的には全15チーム中、4チームが入賞し、結果発表の瞬間には喜びあふれる学生の姿が見られました。「本当にどれも甲乙つけがたかったです」とした上で、入賞案については「来年夏の商品化に向けて企画を進めていきたいと思います」とのお声をいただきました。

学生の良さを引き出し、実社会につながる──大学キャリアセンターが育むキャリア支援の新しい形とは

まずは大東文化大学キャリアセンターから、キャリプロ立ち上げの背景とその効果について、所長の細田氏と津村氏にお話を伺いました。

 

国際関係学部教授・キャリアセンター所長 細田氏
国際関係学部教授・キャリアセンター所長 細田氏

「本学の学生は良いものを持っていながら、それを発揮する機会が少ないと感じていました」と語る細田氏は、学年や学部を越えて学生の成長が大学全体に波及するような仕組みとして “DAITOキャリプロ”を立ち上げたといいます。

 

キャリアセンター津村氏
キャリアセンター津村氏

津村氏も「本学の学生は誠実で真面目という評価は多い一方、もっと前に出てほしいという声もありました。リーダーシップや自律性を育てる受け皿としてキャリプロは大きな役割を果たしています」とプログラムの意義について語ります。

キャリプロは、単なる就職ノウハウの提供ではなく、プロジェクト型で行う実践的な学びの場。異なる学部・背景を持つ仲間とチームを組む経験が、社会人基礎力として必要な人間関係の構築力やチームで働く力を育てています。

実際にキャリプロの継続的な取り組みを通して、新しい発想や成功体験を積み重ね、主体的に行動する学生の姿が見えているといいます。これまで成功体験を積む機会が少なかった学生が自信を深め、授業後に意欲的に質問をしに来るようになったり、他の学生を巻き込んで新たなアクションを起こす姿も増えてきた、といった変化もあるそうです。

今後について、細田氏は「メンター制度による循環やOB・OGとの連携も視野に、さらに広げていきたい」と述べ、津村氏も「キャリアセンターとして、キャリプロで学生が得た力を社会とつないでいけるよう、支援を強化していきたい」と強い意欲を示しました。

アイデアが現場を動かし、仕事の魅力が学生に届く──企業が感じたキャリプロの魅力

つづいて、2025年度後期のDAITOキャリプロで協賛いただいた株式会社ベルクの採用担当吉田さんに、プロジェクトに参加された背景や学生の発表を受けてのご感想を伺いました。

 

株式会社ベルク 採用担当吉田さん
株式会社ベルク 採用担当吉田さん

「大東文化大学はOB・OGも多く、埼玉の地元企業として、意欲ある学生に何かできるのではと考え、迷わず参加を決めました」と語る吉田さん。

学生たちの提案は、Z世代ならではの自由な発想に加え、売場配置や購買導線まで緻密に考えられており、「バイヤーが普段気づかない視点があったり、いい意味で専門的な知識のない学生の皆さんの提案には大きな刺激をもらえました」と振り返ります。

「もちろんすぐにそのまま商品に、とできるわけではありませんが、今日のプレゼンではどの提案にも現場で活かせるヒントが散りばめられていました。社内でも商品化を視野に入れた検討を行いたいと考えています」と学生たちのアイデアに対して高い評価を示します。

 

学生の発表に対し、丁寧にフィードバックを行う吉田さん
学生の発表に対し、丁寧にフィードバックを行う吉田さん

また、「何より印象的だったのは、どのチームも意欲的で、惜しくも選ばれなかったチームまでもが“どうすればもっと良くできたか”を真剣に振り返っていたことです」と、学生たちの取り組む姿勢にも感動したそう。

小売業は生活に身近でありながら仕事の魅力が伝わりにくい業界だと課題感を口にした上で、「キャリプロは、学生にとって仕事を“身近に感じるきっかけ”になっていると実感しています。また是非ご一緒できればと思います」と、今後への期待を述べました。

働くことの意味に触れ、自分らしい一歩を踏み出す──学生が語るキャリプロで得られた原体験

最後に、優勝チームの鴫原由奈さんと石川蓮太郎さんに、キャリプロ前期を通じた変化と今後の展望について伺いました。

二人はともに大学への進学当初、期待感とともに、将来への漠然とした不安・焦りを抱えていたといいます。

 

大東文化大学1年生 鴫原由奈さん
大東文化大学1年生 鴫原由奈さん

「大学生活で何かに本気で取り組み、自信をつけたいと思っていた時にキャリプロの存在を知りました」と鴫原さん。「このままでは“なんとなく過ごした4年間”になってしまうんじゃないかという危機感がありました。“受験では頑張りきれなかったけど、大学ではやりきったんだ”って胸を張れる経験が欲しかったんです」と石川さんも語ります。

今回のキャリプロでリーダーを務めた鴫原さんは、「指示を出すだけでなく、相手の良い点を伝えながら改善に導くことの大切さを学びました」と振り返り、石川さんは、アイデア担当として「納得してもらうための根拠や視点の裏付けが重要であることに気づけたと思います」とそれぞれの役割を通じての学びを教えてくれました。

印象に残る商品名や独自のターゲット設定など、細部へのこだわりが高い評価につながったと感じている二人。「多様な視点を受け入れるチームの雰囲気があったからこそ、自分一人では出せなかったアイデアも形にできた」と話します。

また、キャリプロを通して「働くこと」への見え方も大きく変わったといいます。

 

大東文化大学1年生 石川蓮太郎さん
大東文化大学1年生 石川蓮太郎さん

仕事に対して漠然としたイメージしか描くことができなかったという鴫原さんですが、「自分の考えを伝えたり、誰かと協力しながら形にすることの難しさを知り、働くことの意味や重みを実感しました」とキャリプロを経ての学びを教えてくれました。

また、石川さんも「社会人の仕事というは自分にとって遠い存在でした。でも、キャリプロでのグループワークやプレゼンテーションの経験を通して、少しだけ現実的に想像できるようになりました」と働くことへのイメージの変化があったことを教えてくれました。

今後は、後期キャリプロやビジネスコンテストへの挑戦、さらには次年度のメンターとしての関わりも視野に入れるなど、次なるステップへと着実に歩みを進めようとしている二人。

「後輩たちに自分の得た経験を伝えながら、自分自身ももっと成長していけたらなと思っています」と、これからの学生生活に向けての思いを意欲的に語ってくれました。

後期キャリプロが描く次のステージ

前期のキャリプロでは、「企業の課題を解決する」をテーマに学生たちが実社会に触れながら、自ら考え、動きながら、働くことへの実感を深めていきました。後期からは「興味からサービスを創る」をテーマに、起業家との共創による実践型プログラムへと進化します。

既存の枠にとらわれず、自らの関心を起点に価値を生み出すプロセスは、さらに深い学びと成長の機会となるはずです。

学生の変化が、大学を変え、社会との新たな接点を生み出す――そんな循環を、今後もともに育んでいければと願っています。

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