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明治大学との共催イベント「ハタチの選択」──学生が自分らしいキャリアの一歩を踏み出す、春休みの特別プログラムをレポート

低学年向けキャリア教育に課題を感じている方へ──

3月下旬は大学職員やキャリア教育に携わる人々にとって、学生の就職活動をサポートする重要な時期です。新年度の施策を考えるこの時期、「大学1,2年生のうちに将来を考える機会ってどうしたら作れるだろうか?」といった悩みは尽きないのではないでしょうか。

特に、採用の早期化・長期化が進んでいる今、低学年のうちから将来を意識させることの重要性を感じつつも、どのようにアプローチすればいいのか迷うことも多いはずです。

そんな課題を考える上でご紹介したい取り組みが、2025年3月14日(金)に明治大学とOriginal Pointが開催した「ハタチの選択」です。

このイベントは、明治大学OG・OBをはじめ、多様なキャリアを歩む社会人ゲストにお越しいただき、「大手VSベンチャー」「企業VS転職VS副業」「元人事対談」と、一般的な就活イベントでは語られないような切り口から将来の選択肢について考えを広げるイベントです。また、自己分析ワークや学生同士の意見交換、会場からの質問回答などを通じて自分の考えを深められるよう、リアルな場を最大限に活用した企画を立案しました。

春休み中にもかかわらず、明治大学の政治経済学部・文学部・情報コミュニケーション学部の1・2年生延べ140名が参加し、アンケートでは「役に立った」という回答が98%を得られるなど、参加者の満足度が非常に高いイベントとなりました。今回は、そんな「ハタチの選択」の様子をレポートします。

目次

1.ワークを通して、自分の知らない強みを言語化する
2.大手かベンチャー?思い込みの企業選択から自由になる
3.起業vs転職vs副業 それぞれの選択に迫る
4.元人事のホンネから、本質的な就活の進め方を知る
5.自分らしいファーストキャリアとは?

ワークを通して、自分の知らない強みを言語化する

本セッションは、学生としての「働く」と社会人の「働く」の違いについて考えることから始まりました。

「時間」を提供して対価を得るという学生の「働く」とは違い、社会人の「働く」には「価値」を提供することが求められるようになります。誰に・どんな価値を提供するのかを明確化する上で必要なのが「社会理解」と「自己理解」です。そこで、今回は「自己分析ワーク」を通じて、後者の「自己理解」を深めます。

ワークではまず初めに15分かけて、自身の過去を振り返ります。「学生時代に一番力を入れた経験は?」「その活動を行なったきっかけは?」「そのときの状況は?」「自分のとった行動は?」などの質問に答えてもらいました。

手元のノートを見ながらすらすらと記入していく人がいれば、何を「一番」としたらいいのか迷う人、「自分の置かれていた状況」をどのように答えればいいのかわからない、と戸惑いながらペンを動かす学生もいました。

後半では、学生同士がペアで聞き役と語り役になってワークを進めていきます。先ほどまでの雰囲気が一転し、和気藹々と楽しんでいる様子が見られました。学生からは、対話を行うことで自然と言語化され、これまで気づかなかった自分の「強み」が見つかったという声も多くあがりました。

大手かベンチャー?思い込みの企業選択から自由になる

本セッションは、「大手とベンチャーの違いとは?」という問いから、それぞれの定義を確認することから始まりました。大手からは株式会社ADKホールディングスの長谷川結佳さん、ベンチャーからは株式会社ツクルバの佐藤諒さんをお迎えし、お話を伺いました。

Q大手ベンチャーの違いは?
Qぶっちゃけ転職に有利なのはどっち?

大手/ベンチャーは規模感の違いではなくマインドの違い

長谷川さんからは、大手とベンチャーの違いについて「規模感や年数ではなく、マインドや社風」という言葉が語られました。また、「ベンチャーは経営層と現場社員の考えを一致させやすい。一方で大手は意思決定にかかわる人数が多く、会社の歴史や社風などこれまでの成り立ちや、様々なステークホルダーへの影響を踏まえながら意思決定をしていく傾向があると思う」などと、これまでのご体験をもとにしながら述べていただきました。

佐藤さんは新卒でベンチャーに入社した理由を交えながら、「ベンチャーはどんな世の中にしたいかを自分たちでデザインしていけるんです」と、その魅力について語ってくださいました。

大手でなければ関われないクライアントはいる

会場の学生から「大手とベンチャーでできることの違いはあるのか」と聞かれ、長谷川さんは「ナショナルクライアントを担当できる確率は大手が高いですね」と、関わるクライアントの違いについて回答いただきました。その上で、「自分の思考性を配慮したうえで選択することが大切だと思います」とも付け加え、関わりたい顧客や業務内容・規模感に応じて仕事を選ぶという考え方を紹介いただきました。

また、佐藤さんは「ベンチャーは仕事の裁量が大きく、早いタイミングから選択することができる」と、任されるタイミングの早さや会社への影響力に触れました。

総じて、どちらが良いというのではなく、自分がなにに喜びを感じやすいのか、という本人の価値観や感じ方がその違いになることを教えていただきました。

転職に有利不利はない

続いても、本音が気になる学生からの質問。「ぶっちゃけ、転職に有利なのは大手とベンチャー、どっちですか?」と聞かれると、採用担当としてのご経験もあるお二人は揃って同様の回答をされました。

「大手で肩書きがあるから転職しやすいというのではなくて。大手でもベンチャーでも、その人がどういう経験をして、どこでどんな成果を出して、どんな成長をしてきたっていうのを見るので、個人がどのようにやっているかを重視します」と、佐藤さん。

本当に“その方が何をされてきたか”、だけです。知ってる会社だと採用担当が会社名を調べなくて済む、くらいの違いです(笑)」と長谷川さん。あまりの軽やかな答えのお二人に、驚いた様子の学生もいました。

大手・ベンチャーという“ラベル”ではなく、自分が何を大切にしたいのか──。セッションの最後に学生からは「自分にとっての“安定”ってなんだろう?」という声も聞かれ、自分の軸に立ち返る問いが残された様子が印象的でした。

起業vs転職vs副業 それぞれの選択に迫る

本セッションでは、「そもそもなぜ現在の働き方を選んだのか?」という問いから、元プロ野球選手で現在起業家として活躍されている柴田章吾さん(明治大学・2012卒)、ITベンチャーから大手メーカーに転職された石井勝猛さん(明治大学・2022卒)、元大手企業勤務で独立し書店を副業としてオープンさせた丹.Hさん(明治大学・2013卒)のお三方をお迎えし、以下をテーマにお話を伺いしました。

Qなぜ現在の働き方を選んだのか?
Qその働き方に向いている人・向いていない人の違いとは?
Q大学時代にやっておいてよかったことは?

働き方の選択肢との出会い方

セッションの前に、会場で現状の興味に対して質問が投げかけられると、転職への興味にはほとんどの人が手を挙げた一方、起業・副業に興味を持っている学生はわずか数人程度でした。

そんな中で、丹さんからは驚きの言葉が飛び出しました。「ここにいる人の9割は転職、半分は副業していく時代になっていくと思いますよ。向いている向いていない以前に、みんなやる世界になっていくんじゃないですかね」と語られました。その上で、登壇した三人全員がもともとは現在の働き方をするとは全く考えておらず、その時々で選択をしてきた結果、今があるということを教えてくださいました。

これまでについて柴田さんは「ずっと会社にいるのは幸せだと思ったが、やりたいことと得意なことを考えて、自分が勝てることとして起業を選んだんですよね」と語り、丹さんは「副業ができる環境にたまたまいた」と語りつつも「学生時代から友達とウェブサイト立ち上げたり、ゲームのおもしろい記事かこうみたいなことやってたりして。そこからじゃあ自分で本を作ってみようとか日本で何か売りたいとか思うようになりました」と、具体的な経緯について話してくださいました。

また、石井さんは「キャリアは後からどうにでもなるから。その上で新卒でどうしたいかを考えるといいと思います」など、今の自分の興味や意思からまずは選んでみるという、ファーストキャリアに対しての提案がありました。

年齢を重ねるごとにリスクが取りづらくなるからこそ

学生からは、「(石井さんの経歴をみて休学などの経験が今に繋がっていそうだが)大学時代にやっておいてよかったこと、今戻れるならやりたいことは?」と、学生生活に対する質問が挙がりました。

丹さんは「同じコミュニティにいないようにすること」、柴田さん「自分の知っていることは狭いのでいろんな感性を磨いておくこと」と、多様な人や物事との接点を持つことの重要性を語りました。

また、石井さんからは「親の脛をかじっておくこと(笑)」「年齢を重ねるごとにリスクがとりづらくなったり、チャレンジしづらくなっていくので、頭の片隅にあるちょっとやりたいなって思ってずっと気になっていることにトライしていく、ということかなと思います。それが旅行でも勉強でもなんでも。」と、笑いを交えながらも、学生の今だからこそやりたいことに本気で挑んでみることの大切さを教えてくださいました。

パワフルなOB3人のセッションを終え、一つの企業に勤める働き方ではなく、起業や副業、転職といった選択肢を目の前に、「だったら自分に合う働き方ってなんだろう?」と、新たな疑問を持ってファーストキャリアと向き合い始めた学生もいるようでした。

元人事のホンネから、本質的な就活の進め方を知る

本セッションでは、元株式会社オリエンタルランドの安藤奏さん、元東急株式会社の大久保マリアさんの元人事2名をお呼びし、以下の問いを中心に、人事が就活生に求めていることや元人事だからこそ語れる本音をお話いただきました。

Q人事から見た「いい」就活生とは?
Q「御社が第一志望です」と伝えなきゃダメですか?

doingではなくbeing。誤解しがちなガクチカとの向き合い方

人事から見た「いい」就活生について問われると、安藤さんは「やった事実をどうアピールするかが強調されがちなんですけど、人事が聞きたいのは、それよりもその人のあり方というのを行動から掘り下げたくて。みんなの大事にしていることや強みを知りたいんです」と、よくある就活生の勘違いを事例にしつつ、人事としての本音を教えてくださいました。

大久保さんからは、「私が思ってたのは人事の質問にシンプルに回答してほしいというところです。内面を聞く時間を取れるとすごく嬉しいので、前提はできるだけクイックに、他者がイメージしやすくなるように説明をしてもらって、その後の深掘りのフェーズでは変に用意したことを言い起こせずに、シンプルにその時の自分が思うことを話してもらうとありがたいなと思います」と、伝わりやすい説明を行うことの重要性について教えていただきました。

志望度を伝えること=好きな人の告白

会場の学生からは「他に受けている企業があっても御社が第一志望ですと言わないといけないのでしょうか?」と、誰もがぶつかる面接での葛藤について本音で質問してもらいました。

安藤さんは「私、あなたのこと5番目に好きなのって言う人がいて、お〜嬉しい!って人いないでしょ。ただ、5番目って言うってこの人素直で素敵っていう人事もいるかもしれないけど(笑)」と就活を恋愛に例えながらコミカルに語りました。その上で「だからこそ自分はどうしたいか、っていうのは大事なことだと思います」と、自分の意思で就活に向き合うことの大切さを教えてくれました。

「正解を話すことが面接じゃない」。その言葉に、学生たちはハッとしたようでした。一人の学生がこぼした「“私らしさ”って、どうやって見つけるんだろう?」という問いが、このセッションの余韻を象徴していました。

自分らしいファーストキャリアとは?

最後のセッションでは学生同士の対話でこれまでのセッションを振り返りつつ、気づきを言語化するという時間を設けました。

参加した学生たちの声

なかでも「元人事対談」の影響は大きく、「面接は『正解を言わないといけない場所』だと思っていたけど、『自分らしさを素直に話していい場所』だと分かって、気持ちが楽になりました」「就活に対して不安が大きかったのですが、だいぶ和らぎました」など、就活を目前に控えた学生の不安が軽減されたという声が多く聞かれました。また、「1年生ですが早いうちから就活について考える機会になってよかったです」という声も聞くことができました。

また、「相手に言われた強みが意外で、やってみてよかった」「今まであった大手とベンチャーへの固定概念がなくなり、そんなに差がないことがわかった」という気づきのほかに、「もう少し気楽に、自分がしたいことを軸に考えようと思った」「もっと色々な可能性を考えてみようと思った」など、今後の学生生活に対してポジティブな発見を得られた学生の変化も伝わってきました。

さらにイベント終了後にも、新たに生まれた悩みや疑問を直接社会人にぶつけ、就活に対して前向きに取り組もうとする学生が多く見られました。熱の残る会場には、「ここから何かが始まりそうだ」と思わせる静かなエネルギーが漂っていました。

編集後記

春休みにもかかわらず、多くの学生がこれからの自分の将来について興味を持って来場してくれたことを嬉しく思いました。それと同時に、学生たちが現在の変化している就職活動に対して多くの不安を抱えていることも実感しました。

大学側のご協力のもと、明治大学OG・OBのネットワークを活かした「リアルな語り」を届けることができたのも、Original Pointならではの企画のひとつです。学生にとって“リアルな先輩の姿”と出会える機会を、限られたリソースのなかでも実現することを意識しました。

今回のイベントのように、人事の本音や多様化しているファーストキャリアとの向き合い方など、一般的な「こうすべき」という考えに導かれることなく、さまざまな働き方をしているロールモデルと出会ったり、自分はどうしたいのだろう?という問いを考えるきっかけを持てることは、就活だけでなく今後の人生を歩んでいくうえでも大きな価値のある体験だと考えます。学生たちが自分らしい道を歩んでいくための最初のきっかけとして、今回のイベントが役立っていたら嬉しく思います。

Original Pointでは、「学生が自分らしく社会と繋がるきっかけ」をつくることを大切にしています。今回のようなOBOGとのリアルな対話のほか、授業内のワークショップや動画制作など、大学や企業と連携して学生の可能性を広げる様々な企画を提供しています。

これからも“自分と社会の距離が縮まる機会”を作り続けてまいります。

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